減塩のために酢やレモンなどの酸味、唐辛子やカレー粉などの香辛料を使うことがよく紹介されます。ここでは調味料を加えるタイミングに注目してみましょう。
煮物や照り焼きでは、醤油などの調味料を最後に加えると塩分が少なくても美味しくいただけます。薄味に仕上げた料理を、食べる直前にほんの少しの食塩や醤油につけて食べるのもおすすめです。
このような食材の表面に味をつける工夫は、味を感じるしくみと関係しています。口の中には味蕾と呼ばれる小さな器官(上図)が舌を中心に数千個あって、唾液に溶けた食塩などの刺激を受けるときに、私たちは味を感じます。食材の表面の味の成分は味蕾に直接届くので、より少ない塩分でも十分においしいと感じるのです。また、ドレッシングなどをジェル状にすると味の成分が長く舌の上に留まり、より強く味を感じることができます。
さらに、調理の工夫だけでなく、口の中を清潔にしたり、よくかんで唾液の分泌を促したりすると味の成分が味蕾に届きやすくなります。味を感じるしくみを知って、生かす工夫もしてみましょう。
田中惠子 教授・博士(薬学)/京都文教短期大学 食物栄養学科