農林水産省による「2022年農業技術10大ニュース」(農業技術クラブ加盟会員による投票を得て選定)の内容は次のとおりでした!
1.メタンの産生が少ない牛に特徴的な、新種の細菌を発見
メタン産生量の少ない乳用牛の第一胃から、プロピオン酸(牛にとって栄養となる成分)を多く産生しメタン産生の抑制につながる新種の細菌を分離することに、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が成功しました。この菌を生菌剤として活用すると、牛のげっぷ由来メタンの排出削減や飼料利用性の改善につながると期待されています。
2.植物性プラスチックのリサイクルで肥料を製造
東京工業大学・東京大学・京都大学は、アンモニア水を用いて植物性のプラスチックを植物由来原料と尿素に分解するシステムを開発しました。プラスチックのリサイクル、副生する肥料成分を活用する循環システムの実現が期待されています。
3.豚熱・アフリカ豚熱を迅速かつ同時に判別
農研機構・タカラバイオ株式会社は、1度の検査で豚熱ウイルス・アフリカ豚熱ウイルスを迅速に検出・判別できるリアルタイムPCR法を開発しました。豚熱の迅速な診断・防疫措置、日本への侵入も警戒されるアフリカ豚熱の監視強化へつながると期待されています。
4.土壌病害診断AIアプリを開発
土壌病害AI診断コンソーシアム(農研機構・株式会社システム計画研究所/ISPなど)は、土壌分析や栽培状況などを基にほ場の病害の発生しやすさを診断し、結果に応じた対策法を提示するアプリ「HeSo+」を開発しました。土壌消毒剤を必要なほ場だけに使用することで消毒剤の使用量を削減できるため、生産者の収益性を向上させ、環境負荷も低減できると期待されています。
5.新たな道を切り開くかんしょ「みちしずく」
農研機構は、基腐病に強く多収である焼酎・でん粉原料用かんしょの新品種「みちしずく」を育成しています。焼酎にすると、酒質は焼酎原料用品種のコガネセンガンに似ています。現在、種芋の供給は少ないものの、南九州の産地への普及に向け増殖しているところです。
6.トマト害虫を振動で防除
振動農業技術コンソーシアム(電気通信大学など)は、トマトの株に振動を与え、コナジラミ類を防除する技術を開発しました。害虫の発生抑制だけでなくトマトの授粉を促進する効果もあり、化学農薬の低減や安定生産へつながると期待されています。
7.害虫ウンカ発生調査、AIで時間短縮
農研機構は、イネウンカ類(水稲の主要害虫)の発生調査にかかる時間を短縮する技術を開発しました。目視で1時間以上かかることがある害虫の判別・計数作業を、人工知能(AI)を用いることで3~4分に短縮。的確な害虫防除、被害発生の予測につながると期待されています。
8.超音波でヤガ類を防除
農研機構、株式会社メムス・コア、京都府農林水産技術センターは、超音波でヤガ類(様々な作物の害虫)を追い払う装置を開発し、防除技術として確立しました。天敵のコウモリが出す超音波を嫌がる性質を利用した技術で、減農薬栽培の推進につながると期待されています。
9.リンゴ黒星病の発生低減に成功
農研機構・株式会社オーレック・地方独立行政法人青森県産業技術センターは、リンゴ黒星病の発生源である落葉の収集機を開発しました。作業能率は手作業の約30倍。雪解け後の地面に張り付いた落葉も8~9割を除去します。2022年3月から市販開始予定となっています。
10.急傾斜45度に対応したリモコン草刈機
株式会社IHIアグリテック・農研機構・福島県農業総合センターは、リモコンを使って45度の傾斜地でも作業できる、国産の小型機種として初のハンマーナイフ式草刈機を開発しました。茎の太さが1m以上の雑草などにも対応でき、平地・傾斜地の両方で、作業時間を既存の小型草刈機の約50%に短縮できます。2022年6月から市販開始予定となっています。